2026/10/02 03:00
White Kings 店主です。
ミッドセンチュリー期のモデル紹介が続きます。
当店はこれまでお話してきたように、
時計を所有する上で本来前知識は
不要であって良いと考えています。
私たちは対面、あるいはネットを通して
お客様の不安や疑問と日々向き合っています。
それらを解決すべきはお客様ではなく、
専門店を名乗っている私たち側である
と思います。
例えばお客様が目利きや真贋の
心配をしなければならない販売構造は、
ヴィンテージ時計を専門とする
私たちが最も避けなければならない事態です。
『ヴィンテージは目利きが出来ないと買えない』
お店によって色々な販売方針があると思いますが、
そういう常識や前提は当店は崩していきたい
と考えています。
私たちにお客様にきちんと安心して
時計をお選び頂けるよう、
このようなモデル情報や修理、機構といった
専門知識を発信しています。
ですから当店が発信する時計の情報は、
本当は『おまけ』です。
こんなところがいいな。
この部分に惹かれるな。
こんなお店で買いたいな。
古い時計選びをされる上で、
そういうヒントがあれば良いな、
と思って書いています。
最終的にはご自身の心が一番動いた時計を
お選び頂くことがベストです。
そのお手伝いが出来たら私たちも幸いです。
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今回は今年で生誕70周年を迎え、
一連の世代の中でもっとも洗練された
印象を持つモデル
『Seamaster 3rd model(第三世代)』に
ついてお話していきます。

最初にお断りしておくと、
初期型Seamasterの分類は
ファーストモデル以外、
公式上では行われていません。
当店はSeamasterのファーストモデルで
成立した『Seamasterであること』の
基本的な文法をもとに、
モデルの体系化を独自に進めています。

初代Seamaster(1st / ファースト)には、
以下のような特徴がありました。
・防水構造を備えた外装であること。
・耐衝撃・耐磁性能を備えた『自動巻き』であること。
・『Beefy(がっしり)』あるいは『Fat(太った)』
と形容される独特のラグの形を採用していること。
・幅広でフラットなベゼルを採用していること。
・『スモールセコンド』と『センターセコンド』の
2種類(一対)のバリエーションで展開されていること。
【関連コラム ファースト】
当店は上記の1stモデルのコンセプトをもとに、
そのDNAを直接的に受け継いでいる
モデルを年式ごとに細分化しています。
そしてこの特徴を受け継いだ最後の世代が、
今回紹介する『3rdモデル』です。
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1956年にデビューした3rdモデルは、
古典と革新を同時に内包する、
時代の移ろいを象徴した1本です。
3rdは初期型Seamasterの外装スタイルに、
現代型の自動巻きが初めて搭載されたモデルです。

3rdモデルに一貫しているのは、
機能性とデザインを洗練させ
さまざまな点で”着用”という行為を
意識させない仕組みを目指した点です。
手にしてまず気づかされるのは、
1st譲りの凝縮された存在感に対し
驚くほどコンパクトになったサイズです。

1st、2ndの基本サイズが34.5mmであるのに対し
3rdモデルは1mm小さい、33.5mmです。
たった1mmですが、
正面から見た面積は6%近くも小さく、
時計の印象を変えるには十分すぎる
サイズダウンです。
これにより1st譲りのゴツさが緩和され、
ころりとした丸みに親しみが足された
スタイルへと変貌しています。
1stや2ndモデルのサイズ感に
1stや2ndモデルのサイズ感に
難があった方も受け入れやすいと思います。


『時計が人の前に出ない』というデザインは、
合理化と機能性のバランスをとるという
ミッドセンチュリー期のOMEGAが
得意としたデザインです。
デザインを足し過ぎない絶妙な演出は、
当時から装いとのマッチングが
意識されていたように感じ取れます。

現代時計と同じく秒針が中央についた
センターセコンドモデルは、
初期のSeamasterではお馴染みとなった
短く切り詰められた針を採用しています。

時刻の読み違いを防ぐよう、
文字盤の色味を内側と外側で区分けし
視線を時計の中央に集中させるという
機能的なデザインです。
その視覚効果もあって、
時計の凝縮感がより強く出ています。

そして3rdモデルは
フェイスバリエーションが非常に豊富です。
しっくりくるデザインや雰囲気を
しっくりくるデザインや雰囲気を
探し出すという楽しみ方も持ち合わせます。
ゆえに製品としての均一化を果たしながら、
1本1本の独立性を感じさせるような、
キャラクターの振れ幅が与えられています。

立体装飾(時字)であるインデックスは
抑制的なものから躍動的なものまで
さまざまです。
全体的に遊び心のあるデザインが増え、
その光の表現の多様さに目を奪われます。
中にはダイヤモンドのように輝く
金属カッティングもあれば、
モチーフを抽象化するなどして
凝りに凝った仕様も存在します。


ボディ形状は合理化しながら、
人の目に触れるフェイスで選択肢を増やす
という考え方は実に当時らしい視点です。

中には革新的なモードスタイルを
感じさせるインデックスの意匠もあり、
単なるクラシックと高を括っていると
一杯食わされた気分になります。
この時計をどう身につけるか?
という時計側からの問いと
選択肢がセットになっているのは、
前回のSeamaster120のフィロソフィー
とは少し異なる点かもしれません。

非常に面白いのは、
3rdモデルは最新のムーブメントを
選択したにもかかわらず、
秒針には旧来の秒針表示である
『スモールセコンド』の
バリエーションを残している
という点です。

これは1stモデルから続く
古典とモダンを両立させるという
文脈が守られていることを示します。
新型なのに古典要素がそのままという、
ちょっとしたパラレルワールドを
見ているような可笑しさも覚えます。

あらためて腕にのせると、
腕元へのおさまりをよく考えた
作りであることが分かります。

着用モデルは15.0cmという
かなり華奢な手首をしていますが、
時計がズレることなく安定して
ホールドされます。
時計の縦幅を従来モデルより
更にコンパクトにし、
余裕をもって手首の幅に収まる
ようにしているのも利いています。
横から眺めてこんもりと盛り上がった
シルエットも3rdならでは。
『自動巻きのぽってりした感じが良い』
と仰る方が多いのも頷けるポイントです。


そして3rdモデル最大のポイントは、
その個性豊かな経年変化です。
OMEGAのヴィンテージモデルの中でも
特にエイジングの個性が強く出るのが、
3rdモデルの大きな特徴です。

古地図のように広がるものもあれば、
全体が満遍なく琥珀色に
焼けるものまでさまざまですが
いずれも深い奥行きを湛えています。

『古っぽいのは嫌』と仰る方も、
いざ3rdモデルを腕にのせてみると
ヴィンテージ感と上品さのバランスに
やられてしまうパターンも多いです。

私たちが撮影に取り組むと、
同じモデルにも関わらず
全く写り方が異なるのも3rdの特徴です。
それほど経年と装飾の個性が出ます。
輝きも表情もそれぞれで異なり、
『カメラの数値じゃなく自分を見てくれよ』
と言われているような気さえします。

この表情の複雑さは
当時の文字盤の製法が影響しています。
文字盤の複数の『層』に渡って発生した
経年が折り重なることで形成されたもの、
つまり本物の”奥行き”をもった経年です。
洗練された装飾との対比が織り成す表情は
文字盤の煌めきをより強く印象付け、
退廃の中に確かな品格を感じさせます。

このような濃い経年変化は2ndと3rdモデル
特有のものであると当店は考えています。
実際、1stや、3rdの後継モデルたちには
このような経年があまり発生しません。
その原因については当店の研究で
およそ分かってきていますが、
それは改めて発表できたらと考えています。
時計を静かに振ると、チリチリと小気味よく
繊細な駆動音が中から漏れ出てきます。
2ndまでがハーフローターと呼ばれる
旧式の自動巻きを採用していたのに対し、
3rdは次世代の『全回転式』と呼ばれる
新方式の自動巻きを採用しています。

現代の自動巻きに直接つながる
最新の巻き上げ機構です。
これにより巻き上げ効率が上がり
駆動時の振動も減ったことで、
冒頭の着用者に機械式を意識させない
使い勝手を目指しています。
ただ当時の価値観においては
完全に”完成”とは至っておらず、
それが前述の自動巻きの駆動音です。
当時は駆動音や振動を『不要なもの』
として取り除く努力がされていました。

※後継のCal.560/550系。より静粛性が増している
しかし今改めて3rdを手にすると、
副産物の音や振動が逆に余白を感じさせ、
それがむしろ心地よく感じます。

この3rdモデルをもって
一連の1stの系譜は終わりを告げます。
技術進歩と発展途上の狭間で、
完璧でないこと。
完璧を目指しながら完璧でない
人間じみた味わいこそが、
3rdモデル最大の魅力だと当店は考えます。


自分だけの1本を見つけたい方にとって、
3rdモデルはヴィンテージOMEGAの
中でも格別の楽しみがあります。
1stが生きるためのツールである
ミリタリーの血筋を強く受け継いだのに対し、
3rdは戦後復興の空気から抜け出し
頑丈さを肥大化させる方向”ではない”形で、
時代の洗練化を図りました。
合理化の先に個性を残し、
過去を捨て切れなかった3rd。
その完璧ではない豊かさを
腕元で楽しんでください。
Insgtagramでは実際の着用シーンや
スタイリングも発信しております。
スタイリングも発信しております。
3rdが持つジャンルレスなキャラクターは
ヴィンテージと現行のミックスなど
コーディネートの橋渡しにも使えます。
宜しければご覧ください。
今回公式サイトでは、
3rdモデルを3個体ご用意しました。

現在店舗にも複数本在庫がございます。
ヴィンテージウォッチを通して
皆様と出逢うことが出来たら、
私たちも幸いです。
個性あふれる3rdモデルたちと共に
お待ちしています。
White Kings

