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2023/08/08 02:27

こんばんは。

White Kings 店主です。

8月は本拠地である銀座1丁目の店舗で
腰を落ち着けて営業を行う予定ですが、
9月、10月は各地で催事やポップアップなど
イベントが続きます。

阪急うめだ本店(大阪)』に出店致します。
また10月は
『銀座松屋 世界のアンティークウォッチ市』
と、当店主催のイベント(当店フロア)が控えます。
続報は追ってご報告いたします。
各地域の皆様、楽しみにお待ちください。


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当店は、『初めての○○』を見据えた
お店作りを目指しています。

この”初めて”にはさまざまな意味が
込められていますが、
その一つが
『初めてヴィンテージウォッチを手にする人』
です。

ヴィンテージウォッチに興味を持てなかった、
興味はあるが一歩踏み出せなかった方たちに向け、
消費者側の出身である店主の立場から、
お客様に目線を合わせた発信を心がけています。

ヴィンテージウォッチに限らず、
”沼”に例えられる奥深い趣味の世界は
人生のライフスタイルの一部となり得る
魅力を秘めています。
そしてその熱量が新しい人生観や
心の豊かさにつながることも多々あります。

しかし”沼の世界”は、
ときに知識がない人を置いてけぼりに
してしまったり、
排他的なスタンスになることもあります。

店主は元々かなりのヲタク気質ですから、
そういったマニアやヲタクの良いところ、
悪いところを身をもって体感しています。

ですので、当店がそういった
”分かってる人”だけの空間にならないよう、
開かれたお店で在れたらと考えています。

当店も取り扱い本数が増え、
一見マニアックな時計も入荷するよう
になりました。
同時に、たとえそれが世間一般では
マニアックとされる時計であっても、
”初めての1本”としても自信を持って
お勧めできるモデルであることに
重きを置いています。

古い時計に対する適切な理解と
心ばかりの気遣いさえあれば、
当店の時計には『あなたにはまだ早い』
という時計はありませんし、
30代前半でお店を始めた店主が、
分不相応だと思いながら仕入れた
時計はありません。

全ての個体が、手にする人の日常の延長にある。
それが当店のヴィンテージウォッチのコンセプトです。


ということで、
今回は『初めて』についてです。

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当店が得意なモデルと言えば?
2年ほど前まではSeamaster120でした。

それ自体は今も変わっていないのですが、
お店としても様々な技術的課題を乗り越え
恒常的に扱えるようになったモデルもあります。

その一つが、Seamasterのファーストモデル
と呼ばれる個体群です。



1948年にデビューした、
30m防水を備えた"ドレススポーツ"モデル。
それがSeamaster(シーマスター)の始まりです。

ヴィンテージ好きであれ、車好きであれ、
機械モノやロボット好きであれ、
やはりファーストという単語には弱いのでは
ないでしょうか
勿論、店主もその一人です。

ファースト=ここからすべてが始まった。
という伝説めいたロマンを感じてしまいます。


Seamaster ファーストモデル。
センターセコンドの最初期(ロットNo.1)
※成約品


ファーストモデルは非常にキャッチーな
ディティールを備えています。

まず、いかにも堅牢そうで力強い形状のラグ。
(ラグ:ベルトを支える脚の部分)



別体で作ったラグを本体に溶接することで
優美に見せていた従来の常識を打ち破る、
削り出しによる迫力ある仕上げです。


※成約品


次に、重心を低く構えたケースに備わる
フラットで力強いベゼル。



ギラリと光の輪を描くベゼルは
一度目にしたら忘れられない存在感です。


※成約品

そしてドレスライクでありながら
独特の風格を湛えるフェイス。


※スタッフ私物

1940年代から1950年代にかけての
デザイン解釈がそうさせているのでしょう。


とにかく34.5mmという小径とは思えないほどの
密度を感じさせる佇まいです。

そしてファーストモデル最大の特徴は、
ハンマーのような独特の自動巻きローターを
備えた機構:通称ハーフローターを搭載した
ドレススポーツであるという点です。



このレッドゴールドに輝く金属塊が
70年以上前の機械であるとは
にわかに信じがたいでしょう。

ゴトン、と鈍い鼓動を打つように動くローターは
まるでディーゼル機関車のような重厚さ。

現代の洗練された自動巻きと比較すると
一件扱いづらそうな印象を受けますが、
分解すれば当時OMEGAが持ちうる技術力と
機械への合理性によって裏打ちされた、
技術の塊であることを理解させられます。

小話として、OEMGAは自動巻きの開発に
乗り遅れたメーカーの一つです。
当時のトップが自動巻きが持て囃される
風潮を嫌ったのが理由とされますが、
やはりOMEGAも時代の流れには逆らえず
自動巻きを投入することになります。

結果としてOMEGAは1960年代にかけて
数々の名作と呼ばれる自動巻きモデルを
生み出すことになるのですが、
ファーストモデルでの成功はその試金石
と言えるでしょう。



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OMEGAが『英国軍への納入モデルの技術を応用』
と謳ったように、純粋なドレスモデルにはない
ドレスらしさとスポーティーさを織り交ぜた姿が、
見る者の心を強く惹きつける。
それがSeamasterファーストモデルです。



※スタッフ私物

当時の開発コンセプトを現代解釈すれば
ドレススポーツモデルのレガシー(歴史)
そのものである。と店主は感じます。

信頼性の問題で軍用時計には採用されなかった
自動巻きをこの"ドレススポーツ"にいち早く
投入した点からも、その本気度が見て取れます。



センターセコンドモデル。※成約品

貴族的な時計にとどまらず
常に実用を意識してきたOMEGAにとって、
確かな品格と道具としての優秀さの両立を
目指したかったのは明白です。


実際このファーストモデル、
スーツやジャケットなどのドレススタイル
のみならずヴィンテージファッションや
カジュアルスタイルに取り入れる方が
非常に多い印象です。

当店で購入される方の半数以上が
ドレスというワードに囚われない、
上品な着けこなしをされています。





デビューから75年経った現代でも、
かのデザインコンセプトは健在である。
と感じる瞬間です。



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当店はこのファーストモデルと、
"初期型"と呼ばれるSemasterの
取扱いに力を入れています。

しかし一口に『ファーストモデル』
といっても形は微妙に異なります。

こっちの個体は自分に似合うけれど、
こっちは似合わない…
なんてことが普通にあり得ます。

ファーストという狭い括りの中でも、
時代を追うごとに刻々とデザインや
機能が変化する…ばかりでなく、
同じ時系列で複数のケースデザインや
ムーブメントの仕様が並走しています。



そのためファーストモデルを一度も
見たことがないという方はできるだけ
ご試着をお薦めしています。

ファーストモデル以外にも、
セカンドやサードといった、
ファーストの意匠を受け継いだ
別モデルもございます。



ご自身に合った1本をお選びください。



当店がヴィンテージOMEGAに
特化し続ける中で、
このファーストモデルの整備技術も
多く集まってきました。
現在では初めてのお客様にも
お勧めしやすい時計の一つとなりました。

実際、このファーストモデルが
初めてのヴィンテージデビューという
方が増えてきています。

この70年ほど前に作られたモデルが
多くの人にとって実用に足る精度や耐久性を
維持しているということが、
ファーストモデルの最大の驚きです。

OMEGAの品質への飽くなき追求のおかげとも
言えるでしょう。

ファーストモデルで
ファーストヴィンテージデビュー。
当店は"大アリ"と考えています。


White Kings