2025/06/04 00:14
White Kingsです。
大変お待たせいたしました。
先日各媒体で告知しました
dito × White Kingsによる
オリジナルシューズのサンプルが、
ついに完成いたしました。

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dito × White Kings
Oxford shoes
『ORLE』
"Special edition.#137"
①Leather: Spiral dance
Carbon Black
¥198,000-(tax in)
②Leather: Utah calf
Brown
¥187,000-(tax in)
③Leather: secret edition
¥187,000-(tax in)
※採寸・受注方式
(6/14 受注開始)
納期: 約4ヶ月
Option.
Middle Order : + ¥55,000-(tax in)
※ベース木型に修正を加えお客様の足に近づけます
Full Order : + ¥143,000-(tax in)
※お客様に合わせ木型を一からお作りします
【製品仕様】
型式: 内羽根ストレートチップ
ソール仕様: レザー
製法: ハンドソーンウェルテッド
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一貫してライフスタイルに根差した
腕時計の提案を続ける当店が、
共に人生を歩んでほしいという願いのもと
腕時計の対となりうる存在を、
ditoの増渕氏/石井氏と共同製作。
当店が長年取り扱うドレススポーツモデル:
Seamaster(シーマスター)の
ヴィンテージモデルに着想を得て製作した
本格紳士靴、それが『ORLE(オール)』となります。

製作テーマはもちろん
『ヴィンテージウォッチ × ドレスシューズ』
ドレスとスポーツの融合を軸に、
着用者に寄り添い続ける存在であってほしい
というヴィンテージSeamasterのスピリットを
踏襲しました。
そして今回最も大切にしたのは
『構造を引き立てる沈黙』。
ヴィンテージウォッチとのコラボが
安易なノベルティ的発想や意匠の模倣と
ならないようditoと何度も話し合いを重ね、
当時の時代感や構造・込められた哲学など、
時計の持つ空気感をメタファー(暗喩)として
抽出することに尽力しました。
ヴィンテージSeamasterの分厚い
ヴィジュアルブックを何冊もお読み頂き、
時間をかけデザインに落とし込んで頂いた
のには当店も頭が上がりません。

ORLEは数あるドレスシューズの中でも
格式高い『内羽根ストレートチップ』、
通称: オックスフォードシューズと
呼ばれるデザインを採用しています。

初代Seamasterは軍用時計のタフな構造を
踏襲したブランディングで知られますが、
ORLEではミリタリーを匂わす意匠は
敢えて少なめにしています。
これはSeamater自体が、
世界大戦という暗い時代を抜け出し
新たな時代の幕開けの象徴として
デビューした”ドレススポーツ”であり、
当初のマーケティングとは
裏腹にその精確さや丈夫さは
来たる平和な時代を向いていた。
と言えるためです。
当のSemasterも構造以外で軍用時計の
名残はあまり感じさません。

むしろ貴族の持ち物であった
ドレスウォッチを時代の機微に合わせ
手に届く憧れに昇華したキャラクターこそ、
同じく純然たるドレスシューズであった
オックスフォードシューズで表現する
理由になり得る、と当店は感じています。
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ディティールの説明に移ります。
ORLEのシルエットは独特です。
側面から見るとSの字を横倒しにしたような
うねりあるシルエットが特徴です。

これは歩行と足の形状に沿わせた
作り込みであることに由来します。
ditoが扱うヴィンテージの木型は、
昔ながらの手縫いでしか再現できない
複雑な構造です。
人の足の線を忠実にトレースすることで
吸い付くような着用感を持ち、
自然で有機的なシルエットを宿しています。

また、キューバン・ヒールと呼ばれる、
前方に傾斜するハイヒールスタイルを採用。
骨盤が起き上がることで重心が安定する
設計としました。
靴が歩行を司る重要なギアであり、
ディティールと機能美が一致する
ポイントを押さえています。

靴紐を通す穴=アイレットは、
クラシックな”6アイレット”を採用。

履き心地やアーチ(土踏まず)の
サポートの重要性が高まった、
1940~1950年代頃メジャーであった
6つ穴のディティールです。
※現在は5アイレットが主流
穴が多いことで羽根を高い位置まで
引き上げしっかりとホールドする
ことが可能なほか、
急激にせり上がるORLEのシルエットを
引き立てるアイコンにもなっています。

適度に幅のあるダブルステッチは
ドレスの中にある堅牢なベゼルデザイン
との相性を考慮しました。

100年以上前のCrockett & Jonesにも
見られる意匠ですが、
片側のステッチが切れてしまっても
もう一方のステッチが残るという
耐久向上のメリットを持ち合わせています。
踏まず部分(アーチ)のサイドシルエットは、
鋭く尖る矢筈(ヤハズ)仕上げのコバとしました。

その名の通り矢の家紋をモチーフとした仕上げで、
日本にしかないディティールと言われていますが、
1940年代の英国靴で既に採用された形跡があります。
※出典:SHAMS所蔵品より
1940年代、イギリス、矢。
ニヤリとしてしまうポイントではないでしょうか。

オックスフォードシューズが持つ
普遍のドレス要素、
1950年前後のワークドレススタイルに
求められたタフな機能面。
これらを初代Seamasterが持つ
ドレススポーツスタイルや、
イギリスとアメリカの影響を受けた
多国籍要素に紐づけた形となります。

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ORLE(オール)はフランス語で
『額縁』や『縁飾り』『周囲を囲む装飾』
という意味を持つ言葉です。
日常会話ではあまり使われない言葉ですが
紋章学において使われる用語で、
盾の周囲を細く囲む装飾帯を指します。
同時に”中心を引き立てるための枠"
という美学を備えた言葉でもあります。

今回はそのステッチワークや素材、
シルエットといった連続が織り成す
雰囲気そのものを縁取りになぞらえました。
時計も靴も、人という”中心”を引き立てる
存在という共通項があると言えます。
美しさは表面的な縁取りではなく、
その中心を『どのように縁取ったか』で
決まると当店は考えています。
ただそこに在ることで、
"中心"に意味を与えることを
ORLEは目指しました。

今回、ditoのレギュラーラインとしても
迎え入れられることとなった『ORLE』は、
デビューを記念して当店でのみ別注可能な
特別仕様 " #137 "を冠して登場します。
無関係とも思えるさまざまな
物理法則や定数に突如として
現れる謎の数字:137。
物理学者たちにとって
”マジックナンバー” あるいは
“神の数”とも呼ばれる
『微細構造定数 α』が
今回のモチーフとなっています。

わずか0.1mmのコバの角度。
光が当たったときにしか見えないステッチの陰影。
構造の中に隠された職人の数値感覚。
偶然が重なって構築された必然。
この靴には、1/137の哲学が宿っています。

世界のあり方を規定する
見えざる縁取りをコラボレーションに込めて、
皆様にお届けいたします。
受注は6月14日(土)12:00から。
当日はどなたでも受注頂けますが、
足の計測など含めお1人様1時間ほど頂戴します。
採寸に関してご予約頂くとスムーズに
ご案内できるかと思います。
次回はORLEの製作過程とその仕様に迫る
特集に移ってまいります。
続
White Kings