2021/04/09 01:42
こんばんは。
WhiteKings店主です。









様々な情報がネットで無料で手に入る時代。
有益な情報であふれる一方、適当な情報や
本当っぽく書かれている真偽不明の情報
にも行き当たります。
元靴修理職人の中村はよく
『ネットの革靴の情報があまり信じない方が良い』
と言います。
靴を果てしなく分解し、中の”真実”を見てきた
中村の言葉には、重みがあります。
彼が分解した中には、素晴らしい技術も
不都合な真実も全て内包されていました。
靴に限らず無料情報の中には盲信的な内容や
作為的な情報も多数含まれます。
裏の取れていない主観だったり
『〇〇がすごい!』
といった情報が実は広告で成り立っていた
なんてケースは沢山あります。
逆に知られたくない情報も
情報という森の中に紛れ込ませてしまえば
わかりません。木を隠すなら森の中。
真実に近づくには自ら手を動かさないと
いけないのは今も昔も変わらないなと思います。
当店のコラムも、読み物であり、無料の情報です。
愛好家が『知ってて当たり前』の情報を
もう少し分かりやすく、より多くの方に伝えたい。
古い時計をもっと気楽に楽しんでもらいたいと
始めたのがきっかけです。
ですので、こうしたコラムの情報は
一つの”娯楽”として受け止めて頂ければ幸いです。
もっと深いお話は、
いつかお会いしてお話ししたいですね。
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今回は単刀直入に愛好家目線のコラムです。
少々マニアックな内容になりますので、
ヴィンテージOMEGAを掘り下げたい方のみ
お読みください。
OMEGAの外装には
『ランチェロケース』と呼ばれるものがあります。
かつてOMEGAが販売したシリーズ、
噂が噂を呼び、もはやシリーズ体系すら
よく分からない噂で肉付けされた曰くつき( ? )。
その中ではっきりしているのは、
『リファレンスを共有するモデルが存在した』こと。
RANCHEROと同一のリファレンス(型番)
を持つモデルが展開されていたのです。
そのリファレンスの共有先(元?)は、
一見無関係にもみえるSeamaster(シーマスター)。
1959-1960 OMEGA Seamaster ”RANCHERO CASE”

40㎛のゴールドメッキを採用した個体。
RANCHEROにも、ごく僅かに存在したとされます。
RANCHEROと同様の外装を採用した個体は、
ランチェロケースなどと呼ばれます。
ランチェロケースを備えたこのモデルは
RANCHEROと同じ世代に登場し、
RANCHEROと共に姿を消しました。
2900番台などと呼ばれるRANCHERO系の
ケースは同じ30mmキャリバーを積む他モデルより
明らかに大型です。

34mm以下が主流だった1950~1960年代初頭にかけて
直径36mmというのは相当に大型な時計でした。
”特殊”と呼ぶのに妥当なサイズです。

ドカンと腕元を覆う面積。
さすがに迫力があります。

大型で極太のラグ、45mm近い大ぶりな縦幅。
そして、なぜか定番のスクリューバックでない
圧入式(スナップバック)の裏蓋。
そっけないフラットな裏蓋には、
小さく”WATER PROOF”と彫られています。

36mm径に対応するスクリューバックが
用意できなかったのでしょうか。
このあたり、RANCHEROケースの謎です。
1960年初頭まで採用された
”下がりS”と呼ばれる書体。
無論、当時のままのオリジナルです。

フェイスのエイジングは
なかなかに心を揺さぶってくる美しさ。

ドルフィンハンドは平面的で、伸びやか。

機械は後期のRANCHEROにも積まれた
名作:Cal.285。

RANCHEROにはスモールセコンドタイプと
センターセコントタイプが存在し、
センターセコンドにはこれが採用されました。
ここまで見てきた中で、
時計本来のスペックはRANCHEROと
殆ど変わらないといって差し支えないでしょう。
店主の私物としてしばらく手元に置いていましたが
今回RANCHEROの世界を掘り下げるために
整備を施し販売することにしました。
今後も販売を通して少しずつRANCHEROを
掘り下げていきたいと考えています。
今日はRANCHEROと同じ型番を持つ
不思議な個体についてご紹介しました。
ちなみに金メッキの40μという厚みが
OMEGAで採用されたのもごく僅かな期間です。
このメッキ仕様については、
次回のコラムでご紹介したいと思います。
WhiteKings 店主