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2020/11/26 19:51

こんばんは。

WhiteKings 店主です。

最近、当店の写真をお褒め頂く機会が増えました。

また写真をご覧になった後に
実物をご覧頂いたお客様から
『写真の雰囲気通りだった』
『むしろ写真よりきれいだった』

というお言葉を頂くことも増えました。


ヴィンテージウォッチの良さを
ありのままお伝えしたい当店としては
大変嬉しく、また有難いお言葉です。



当店の写真はディレクタを務める中村
中心となって撮影しております(一部店主)。



当店と中村のコンセプトは
『ありのままの美しさを撮る』です。

中村は常に
『良くない時計(被写体)を良く撮ることはできない』
『良いものだから、良く撮れる』
と口にします。

ゆえに単なる雰囲気写真ではなく、
個体が重ねてきた傷もそのまま撮ります。
※風防などの視認性にかかわる部分は
 交換または綺麗に修復し納品しています。

結果として、『うーん』となる時計は
掲載や販売自体没になることもあります。

『良さそうに見せる』と『良さを見せる』
は別です。

当店は、常に後者でありたいと考えています。


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定期的なマニアックな話題です。

フルオリジナル、という言葉があります。
当店は基本的に当時のまま=オリジナルを
リスペクトしています。

当時のメーカーが
『これが一番カッコいい、ベスト』
と思って販売していたわけですから、
全体のバランスや雰囲気は当時のままを
尊重したいと考えています。


そして、当時のまま=オリジナルを紐解くと
もの凄い拘りや目に見えない熱意を感じ取れ
非常に感銘を受けることもあります。
それが当店がオリジナルに拘る理由です。


例えば、この個体。


OMEGA 1960’s Constellation Automatic Cal.561



ペットネームを冠するシリーズの中で
最も格式の高い時計は、スピードマスター…
でも、シーマスター…でもなく、
実はこのConstellation-コンステレーション-。

星座(Constellation)を名に持つこのシリーズは
以前のコラムでも取り上げました。


この個体は
”12角””パイ皿”または”亀の甲(なぜか関西を中心)”
と呼ばれる12角形の文字盤デザインを持つ中で
比較的後年のモデルです。

モデル前期は比較的エッジの立った12角を
採用したのに対し、このモデルは緩やかで
柔らかなエッジを描きます。



36mmという大型のケースを採用したことで
文字盤のサイズも専用設計。
文字盤の面積が増えたことでエッジも
緩やかになったのでしょう。

文字盤の仕上げは12角の内側と外側で異なります。
この仕上げの差が絶妙な表情と奥行きを生んでいます。




60年代は自動巻きの全盛期で
『竜頭(リューズ)を巻かなくても時計が動く』
という機構を強く打ち出した時期でもありました。

その中で生まれたのが、『竜頭レス』等と呼ばれる
一見竜頭がないように見えるデザインです。



この竜頭、実に操作がしづらい!
裏側から指の腹で押し付けるようにして
竜頭操作を行います。
初動時は、時間を合わせるのも一苦労です。



しかしこの”敢えて”操作しづらいデザインには
同社が誇る名機:Cal.561への絶対的な自信が
込められています。

当時としては非常に優秀な巻き上げ効率を誇った
Cal.550/560シリーズは、公称50時間もの
パワーリザーブも相まって、腕に嵌めておけば
まず止まることがありませんでした。
※稼働するためのエネルギーを貯め込む力を
 パワーリザーブと呼びます。




デイリーユースで嵌めっぱなしにすることを前提に
『いちいち竜頭を巻かなくても良い』
という確固たる自信がこの竜頭の形に現れています。

そして当時のConstellationは全てのモデルで
クロノメーター規格を取得していました。

その精度は当時の時計で間違いなくトップofトップ。

『いちいち時刻を修正しなくても正確である』。
同社のConstellationはまさに精度の象徴であり
時刻のズレすらない、修正不要。



この美しいシンメトリーのデザインは、
この時計が『Constellationである』からこそ
採用されたと言えます。


そう思うと、単に
『竜頭操作がしづらいモデル』と
紹介されてきた過去の論調がいかに
短絡的かと考えさせられます。



全てのデザインには、意味がある。
それが当時のモノ作りである気がします。



中村のマクロレンズでフェイスに寄ってみると、
更に面白いことに気がつきます。

5分刻みに植えられた立体インデックスの先端には
四角い切れ込みが入っており、ほんの僅かな隙間に
夜光塗料が流し込まれています。



文字盤の6時位置にはトリチウム夜光塗料を示す
マークがなく、意識しなければ見落としてしまいます。
小さな夜光の粒がぽつんと載ったさまは、職人技です。



見えない形で着用者に寄り添っているのも
これまたにくい仕様です。

この時計は9連ブレスレットを含め
オール・オリジナルです。

『竜頭を巻きづらい』または『部品がない』
という理由で別の竜頭に付け替えられている
こともあるこのモデル。

当店はこのモデルが存在した意味に敬意を表し
竜頭には手を入れません。


販売当時の高級時計に相当しながら、
貴族階級が身に着ける時計とはまた違った
『実用時計としての最高級』の形がここにあります。


”当時のまま” をご堪能下さい。



WhiteKings