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2020/11/06 03:32

こんばんは。

WhiteKings 店主です。

当店において
『一次情報(大元の発信源)』と
『二次情報(誰かがまとめた情報)』
を精査する作業は大変重要な業務と考えています。


一次情報とは、実体験だったり
公式発表、公的資料など。

対して、例えばムック本などの雑誌や
まとめサイト、オフィシャルでない
製品説明などが、二次情報。

最も信頼できるものは、やはり一次情報。
販売情報を精査するとき
どうしても一次情報が見つからなければ、
二次情報同士をぶつけて最も信頼できる答えを
導き出さなねばなりません。

多くの人が『情報源』として挙げる
二次情報は実は意外といい加減なもので、
『友達の友達の話』が信用できないように
誤情報がもっともらしく書いてあることも
しばしばです。

例えばOMEGAのドレスウォッチを
007やマッドマックスの主人公が
着用したことになってしまうなど。

世紀末を爆走する主人公の相棒が
ドレスウォッチでは荷が重すぎますね。
デビル違いです。




当店のコラムは、
実体験に基づいたものもあれば
独自解釈もあります。

最近、個人販売などで
当店発信の情報の転載が目立つようになりました。

念のため、当店コラムは”読みもの”に過ぎません。
二次情報のさらなる転載は危険です。

是非ご自身の持つ情報と、当店の情報を精査し
ご自身だけの答えを見つけて頂きたいと思っています。


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世界初のダイバーズウォッチにおいて
必ず話題に上がるのは、
ROLEXが版権を買ったオイスターや
ROLEXと蜜月の関係であった
パネライのラジオミール。

これらにフォーカスした記事は
散見されるものの、

『商業ベースに落とし込んだのはどこか』
考えたとき、

ROLEXと共にOMEGAの名が出てくるのは
意外と知られていません。

ダイバーズウォッチの誕生を探る上で
『海』そのものの名を冠した時計の存在を
抜きにして語れません。

OMEGAのダイバーズウォッチの歴史。
"世界初の市販ダイバーズウォッチ"と称されるモデル。

全ては、この時計から始まりました。



1930's OMEGA MARINE



Seamasterのファンであっても
この四角い=レクタンギュラーウォッチの
存在を知る人はあまり多くはありません。

しかし
Seamasterの名を冠していないこのモデルは、
まぎれもなくOMEGAの防水時計の始祖です。


この時計を見て
ダイバーズウォッチだと思う人はまずいません。

どう見ても
クラシックで少し分厚いドレスウォッチです。





このMARINE-マリーン-は
非常に独特な構造をしています。

時計の裏側にはクリップがついており
これを外して時計を引っ張ると、





中から『本体』が出てきます。





この独特な構造、
防水効率に優れた丸型の時計において
ROLEXが防水ケースの特許を取得したため、
OMEGAは別のアプローチで防水時計を
独自開発し市販化に踏み切ったとされています。

この一見奇抜な構造、決して馬鹿にはできません。
ノリや思いつきの設計でないのは明らかです。


まず、本体を引き抜く際の絶妙な抵抗。




徹底的に煮詰められた
精巧さを感じずにいられません。

このケースとクリップは
水圧がかかることでより強固に密着し
潜れば潜るほど本体が締め上げられ、
防水性が増す構造。

当時は密封性向上のため
コルクが詰められていたといわれます。


また、完全な二重構造とすることで
空気の層を作り、急激な温度変化にも
耐えられる設計となっていました。

そのため、当然ガラス風防も二重。





まるで潜水艦のようです。

最終的に135m相当の水圧に耐えたそうです。

このガラス風防、本体がズタズタの個体でも、
なぜかここだけ無事に残っていることが多い。
※その理由は是非触ってお確かめください。


今回の個体、
コレクター泣かせのMARINE-マリーン-において
ここまで状態が良い出逢いは稀。


飛びアラビア数字の配置が逆転した、
偶数飛びアラビアは当時のバリエーションです。
修復が施されていないグッドコンディション。




形状やシリアルから、
1930年代中期の個体でしょう。

この枯れ具合からくる色気は
腕に嵌めたら、おしまいです。
既に店主は手放すのが惜しくて堪りません。

青焼き針=ブルースチール。




このケースのおかげか、変色はほとんどなし。

美しい。

ルクルトのレベルソを彷彿とさせる分厚いケース。
この個体はステンレススチール製です。




この分厚さと37mmという縦幅、
当時としては異例な18mmというラグ幅のおかげで
どっしりと存在感があります。




レベルソとマリーンは用途こそ違えど、
スポーツシーンに於いて特殊構造を付与した点は共通。

マリーンは
多くのメゾンからも注目されたものの、
その特殊すぎる構造から一般定着することなく
ラインナップから姿を消しました。

しかし歴史に取り残されたこのモデルもまた
我々の心を非常に惹きつける逸品です。

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一般的には
『学者であり、探検家であり、作家でもある
W.ビービ氏が着用しその防水性を世に知らしめた』
とされますが、
冒頭でふれたように、二次情報が独り歩きしている
と当店は見ています。

ビービ氏がMARINE-マリーン-を
着用したのは事実ですが、
少なくとも135mの潜水性能を証明したのは
彼ではありません。


そういった小話も含め、
ぜひ展示先にお越し頂き『伝説』をご堪能下さい。


WhiteKings 店主