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2020/01/27 04:56

こんばんは。

WhiteKings(ホワイトキングス) 店主です。


前回コラムの続編となります。


 ” Genève ”(ジュネーブ)とは何か その1

https://whitekings.theshop.jp/blog/2020/01/07/064724


ドレスウォッチとして登場したジュネーブは、時代の移り変わりとともに大きな変貌を遂げます。


ドレスウォッチとしての正統進化を目指したDe Ville(デビル)に対し、ジュネーブは若年層や新たな購入層への訴求を目指し、意欲的なモデルの投入を続けます。


この頃のOMEGAはその圧倒的な資本力と開発力・技術力を生かし、各モデル専用のケースや文字盤を製造しています。


多くの中小メーカーがサプライヤーから共通規格の内外装を採用したのに対し、開発に莫大な費用の掛かる専用設計をモデル毎に設定しており、いかにメーカーとして図抜けた存在だったかが伺えます。


1970年前後のモデルは特に顕著で、非常にバラエティに富んだジュネーブの姿を垣間見ることができます。


OMEGA DYNAMIC 独創的なセパレート式のケースと専用ベルトが特徴的


錨の意匠が目を惹くモデル
ダイバーズにファッションとしての価値を見出そうとしていた


ワンプッシュクロノ機構を有したモデル
Dynamicや上記ダイバーモデルの針を組み合わせたデザインとなっている


日本で馴染み深いトノー型モデル

"ambitious"のキャッチフレーズのもと奨励賞や記念品として多く採用された


※同一モデルであっても、製造時期によってブランドロゴであるΩマークの形状が異なるのが、この時期のOMEGAの特徴でもあります。針形状は他シリーズとのクロスオーバーであるなど、ランダムかつトリッキーな製品展開がジュネーブを混沌たらしめている所以です

そのため、Ωマークの形やデザイン単体を見ただけで時計の真贋やオリジナル性は判断できず、仕様違いや整合性を理解するには、同年代のシリーズを包括的に網羅する必要があります。



1970年代以降、機械式時計は「より薄型に、よりハイビート(高精度)に」進化を続けます。

OMEGAのムーブメント=キャリバーは3桁から1000番台と呼ばれる”4桁”に移行し始めます。



自動巻き機構のCal.1012

薄いローターと梨地仕上げの外観が特徴的


この時代は薄型ムーブメントや音叉時計の台頭、更にはクォーツの登場と、時計の構造が目まぐるしく変わり混沌としていました。


余談までに、このハイビートなムーブメント:1000番台は最新技術を盛り込んだ先進的な構造でしたが、採用された樹脂パーツの耐久性や攻めたピーキーな設計、簡素化された仕上げを巡って後年の評価が大きく分かれた機械と言えます。

しかし俗に言われるコストカットが主目的ではなく、OMEGAが常に新しい技術や革新的な機構にチャレンジした結果でもあります。


1970年代のカタログ 資料3桁のキャリバーと4桁のキャリバーのモデルが併売されている



OMEGAの製造本数の半数以上を占め、20年以上製造され続けたジュネーブですが、1979年、クォーツの台頭で方向転換を迫られたOMEGAはジュネーブ州の自社工場の閉鎖を決定します。

これに前後し、Genèveといった地名表記はジュネーブ州で製造された時計に限られるようになったことで、Genèveの名を冠したモデルは生産を終了することとなります。


クォーツショックに直面したOMEGAが、自社製造だったムーブメントの大半を社外製に切り替える直前の出来事でした。


以降、ジュネーブとして製造されていた一部モデルは再びノンネームへと戻り、さらに時代が下るとノンネームモデル自体が消滅し、ジュネーブの系譜は途絶えます。


ひっそりとその歴史に幕を下ろしたジュネーブですが、実は社外ムーブメントを一度も採用せず、生産を終了しています。


つまり、ジュネーブの名を冠したモデルは、全てOMEGA自社製のムーブメントを搭載しているのです。


更に言えば、音叉機構を用いたElectronicモデルを除いて、クォーツモデルが存在しない希有なシリーズでもあります。


結果的に、OMEGAのブランドイメージを貫いた真のマニュファクチュールシリーズなのかもしれません。


マニュファクチュールとしてOMEGAの誇りを最後まで守り切ったジュネーブは、高品質でコストパフォーマンスの高いヴィンテージウォッチとして、ヴィンテージウォッチの入門者から玄人まで、全てのヴィンテージファンを満足させてくれる懐の深いシリーズと言えます。

ジュネーブのラインナップは【こちら

WhiteKings 店主