2025/04/24 07:50
おはようございます。
White Kings 店主です。
最近はコラム制作やSNS投稿が
深夜投稿が標準になりつつあります。
早いもので創業7年目に突入しましたが、
相変わらず個人店特有の時間の
切り売り感は否めません。汗
ただスタッフも増えたことで、
少しずつお店らしくはなってきたかなあ
とも思っています。
ご報告が遅くなりましたが、
3月にシーズファクトリー様より
腕時計大全シリーズ第5弾である
『3大ブランド大全』
が発刊されております。
日本唯一のアンティークウォッチ専門誌
『LOW BEAT』を手掛ける同社から出る
過去記事の総集編なのですが、
今回なぜか当店に過去記事の監修を
ご依頼いただきました。
弊店が校正を行ったのはOMEGAの
記事部分となります。
10年以上前の記事という事もあり
色々と研究も進んでいることから
フランス語圏(スイス)の参考書を
翻訳しながら結構な手直しとなりました。
とはいえドレスウォッチをメインとする
当店が果たして手掛けて良かったのか…?
兎に角、関係者の皆様にはこの機会を頂き
厚く御礼申し上げます。
誌面には当店のアーカイブも載せてあります。
正直スポーツウォッチを期待されて買われた方に
とっては当店からの半ば嫌がらせのような(?)
大量のドレススポーツモデル。
しかも当店の取り扱いラインナップに偏りまくった
選抜方法で資料を提出しております。
(歴史的なアーカイブを期待された皆様、
本当に申し訳ございません…)
本誌はAmazonのほか全国書店、
当店店頭でもお買い求めいただけます。
(希望があれば通販対応可能です)
経年変化について一家言ある(体の)お店ですので、
その辺りを何となく汲み取って頂ける掲載であれば…
幸いです。難しいだろうなぁ…
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今回から特定のモデルについてライトな
コラムを公開していこうと思います。
正直どこまで続くのか不安ですが、
OMEGAのドレスウォッチや、
そのモデル毎の経年の魅力について
当店のロジックでお話していけたらと思います。
今回は当店が創業当時から得意としている
Seamaster De ville (シーマスター デ・ヴィル)です。
※日本では『シーマスター デビル』での呼称が
多いため以下はこの名称で統一します。

シーマスターデビルは1960年10月に
発表されたシリーズとされます。
OMEGAの時計は発表と販売時期にずれがある
事が多いため実際はもう少し後かもしれません。
当時アメリカでの需要を見込んだ時計とされ、
フラッグシップモデルのConstellation、
そして中核モデルのSeamasterの
中間に位置する高級モデルでした。
それまでのSeamasterのシルエットから
大きく離れ都会的で洗練された印象を持つ
このシリーズは”De ville”=都会という
『副題』を与えられました。
初期のシーマスターデビルには
実は”De ville”の表記は入りません。
但し広告には確かに”De ville”の字が躍ります。
つまりOMEGAにとってはモデルの方向性を
匂わすのが主な目的だったということです。
その奥ゆかしさに待ったをかけたのが、
アメリカ最大のOMEGA輸入代理店である
ノーマン・モリスであったと言われています。
1962年以降のモデルからは文字盤に
Seamaster とDE VILLEがダブルネーム
表記になるようになりました。
モノに名前を付ける文化が根強い
アメリカらしい要望だなと思います。
シーマスターデビルは外装をワンピース構造とし
(店主はむしろクラムシェル構造だと思っています)
高い気密性を確保すると同時に、
ドレスウォッチに求められた薄型を実現しました。
この実用的な仕様はSeamasterのツールウォッチ
としての新たなアイデンティティを盛り込みながら
資本主義社会で生き抜く紳士たちの相棒として
心強いドレスウォッチであったと言えます。

断面図。正確にはSeamaster COSMICのものだが基本的な構造は同じ。【出典:シーマスター物語(ワールドフォトプレス)】
シーマスターデビルにはいくつもの
バリエーションがあり、
前述の”DE VILLE”表記の有無、
手巻き/自動巻きの選択肢、
カレンダー機能の有/無、
更にはサイズの違いや外装の”製造国”の
違いなどから選んでいく形になります。

共通するキャラクターはモダンで繊細。
バブル(泡)を彷彿とさせるような
大きく盛り上がったアクリル風防(ガラス面)、
すらりとフェイスいっぱいまで伸びる針、
短くミニマルに設計されたラグなど、
当時の洗練されたイメージが詰め込まれています。

ゆえにシンプルで素材感を活かしたスタイルとの
相性は抜群です。
同時に服装が色柄ものの場合は引き締め役と
しても機能するのはOMEGAのシリーズを
”橋渡し”してきた中庸さの賜物でもあります。


当店がシーマスターデビルを得意としているのは
やはり長年店主が集めていたシリーズであり、
そのモデル毎の違いや使い勝手を把握して
ラインナップに加えているのが理由と思います。
年式ごとの印象の差や経年変化を語る専門店は
あまりないでしょうからヴィンテージウォッチに
モデルとしての魅力”プラスα”を求めたい方には、
良いご提案が出来るかなと思います。

エイジングは文字盤の仕上げ方、
大まかに言うと”筋目”の走らせ方によって
経年の傾向が変わります。
もちろんこれだけではないのですが、
シーマスターデビルはこの文字盤の仕上げに
よって虹色を帯びたメタリックな経年が
出ることがあります。
ドーム状に盛り上がる文字盤(ボンベダイヤル)の
カーブが強いのでその印影がはっきりと見え、
これは他のモデルにはない魅力と言えます。
装着感やさりげなさを重視されたい方は
手巻きモデルからピックアップしご提案しています。

手巻きモデルはいくつか種類があり、
その中でもミッドサイズと呼ばれる
小ぶりなものは個体数が少なく貴重です。

装飾は最低限ながら手首に自然と存在する
佇まいはまさに当初のシーマスターデビルが
持っていた奥ゆかしさを継承しています。

”豪華な実用”を求めたい方は
1960年代中期前後からお探ししています。
OMEGAの文字が飛び出す”立体植字”、
自動巻きと日付機能が搭載され、
使って良し、愛でてよしの実用時計として
完成された時期です。

その他にも変わった文字盤なども存在します。
これらの分類を細かく行うことも可能ですが、
あくまで当店は知識ベースの時計選びではなく
『その人にとって似合うかどうか』のために
知識を活用し時計をご紹介しております。

マニア向けのようで意外と初めて
ヴィンテージウォッチに触れる方への
説明に力を入れているのも当店のスタイルです。
シーマスターデビルの当時のラインナップは
数え切れないほど存在します。
意外にもサイズによる印象の違いも大きいため、
あくまで実機と、腕に載せた時の印象ありきで
決めて頂いた方が良い選び方ができると思います。
本日はシーマスターデビルについてご紹介しました。
※掲載画像は過去成約品も含まれます
White Kings 店主