2024/08/08 15:19
White Kingsです。
大変お待たせいたしました。
兼ねてより開発を進めておりました
Seamaster 1st Model
(シーマスターファースト) への愛と、
敬意を反映したハンドメイドストラップ。
その第一弾である、
【Axiom(アクシオム)】
が完成いたしました。


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Model:【Axiom Origin】
Material: Gibier leather(Made in Japan)
Collar: ①Carbon Black / ②Walnut
③Yellow ocher / ④British green
Size: ①18-16mm ②16-16mm
Price: ¥25,850- (tax in)
【実用新案申請中】

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多くのご協力のもと試行錯誤を繰り返し
ようやく製品化に至ることが出来ました。


今回の製作テーマは
【One ”stitch” beyond】
(もうひと針、先へ) 。
『One step beyond(もう一歩、先へ)』
という有名な台詞へのオマージュです。
モノ作りの世界では、
たった1ステッチの違いが仕上がりや
耐久性を左右することも多いのですが、
あと一歩、もう一歩と進みを続ける人々の
腕元に寄りそうプロダクトとなるよう、
当モデルのキモである”ステッチ(針目)”に、
その思いを込めた形となります。

また、我々が製作を行う上で
『安易な模倣やノスタルジーに浸らない。』
という意味でも、One step beyondに
掛けております。
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今回開発のヒントとなったのは、
1950年代前後にOMEGAの
ドレススポーツモデルに採用された
ヴィンテージストラップです。

まず真っ先に目が向くのは、
大きく膨らんだストラップの縁取り
”ヘリ返し”の存在です。

このヘリ返し構造は1940年代後半から
形を変えながら10年ほど採用された
独特の意匠として認知されています。
当時Seamasterと共に広告を飾った
象徴的なデザインでもあります。

一見大胆に見えるこのヘリ返しは、
異素材である時計とストラップに
連続性をもたらす存在でした。
特に当時デビューしたばかりの
『Seamaster』のデザインとの
マッチングは素晴らしいものでした。

※当時のフル・オリジナル
この仕様は現在のOMEGAや
ベルトメーカーでは製造されていません。
後述の通り技術的な問題やコスト、
何より現代時計とは不釣り合いな
キャラクターである点なども
影響していると思います。
初期タイプでよく知られるのは、
1950年代中期に見られた
稔(ねん)と呼ばれる縁取りで
装飾された仕様です。

こちらは当時の広告が多く残っており、
資料も豊富です。
他にもコバ仕上げと呼ばれる、
切りっぱなしの縁を磨いた
仕様も存在しました。

※1950年代中期 ヘリ返しをしない、コバ仕様
対して当店が着目したのは
既出の1950年代初期の仕様です。
こちらは柔らかな皮革を限界まで
薄く漉(す)いたドレッシーな表現と、
細糸によるステッチワークが特徴でした。

先の50年代中期のカジュアルな
仕様とは随分異なる印象です。
その皮革の選択も相まって
ストラップ本体は驚くほど軽く、
羽の生えたようなと形容したくなる
装着感が持ち味でした。
しかし、当店は当時のストラップを
”未完”の作品と捉えています。
今回当店はその初期型ストラップの
デッドストック品を奇跡的に複数本
入手しました。
これらを分解し製法の特徴・
弱点を分析する中で、
当時の設計者が意図したであろう
設計の輪郭が見えてきました。
同時に、その設計を実現するためには
様々な要素が当時の製品に不足していた
ことも明らかになりました。

つまり、この初期型ストラップは
優れた設計思想を持ちながらも、
採用素材や縫製・技術面などに
問題を抱えたまま販売されていた。
ということになります。
考案者が想定したであろう
耐久性を持たせるための工夫が
機能しないままイミテーション
で終わってしまったのは、
残念な結果だったと思います。
実際、この仕様は脆弱な耐久性もあり
殆ど現存していません。

今回の開発ではこれらの
課題をフィードバックし、
現代の技術と本来の設計意図を
予測しながら再構築し、
『もう一歩先』を目指しました。
つまり今回の【Axiom】の開発は、
当時の仕様の『再現』ではありません。
オリジナル品を本来あるべき姿、
完成に導くために始動したプロジェクトです。

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【Axiom(アクシオム)】の
仕様説明に移ります。
未完の作品を現代に甦らせると同時に、
着用時の快適性、
何より『格好良い』を実現するため
様々な試みを投入しています。
ストラップの縁取りは、
当時のオリジナル仕様を踏襲し、
ふっくらと曲線を描く
『ヘリ返し』としています。

当時のものは尾錠で留める際、
テンションがかかるヘリ返し部分が
真っ先に裂けました。
※開発段階でも同じ問題が発生しました。
Axiomの設計ではこのヘリ返し自体を
耐久の”要”として機能させました。


この構造を踏襲するには、
皮革を限界まで薄く漉(す)く
必要があります。
しかし薄く漉けば漉くほど
革自体の耐久性も弱くなる
矛盾もはらんでいます。
Axiomは設計と材質を煮詰める
中でこの問題を解決しています。
当初は『ここまで漉くと破れる』
と職人も危惧した中、
結果として造形美と機能美が
共存する唯一無二のプロダクトに
生まれ変わりました。

Axiomは革製品専門職人の
ハンドワーク(手縫い)によって
丁寧に縫製されています。
ミシン縫製は使っておりません。

手縫いは縫製強度を上げると当時に、
細かな作り込みに対応できます。
万が一使用中に糸が切れてしまっても
解れが広がりにくいという特徴があります。
非常に手間のかかる製法のため、
製作依頼できる職人探しに数年を要しました。
単にこちらの要望通りのものを作るのではなく
製作を一緒にブラッシュアップできる
プロ集団とタッグを組め当店も嬉しく思います。
手縫いと言えば太い糸とカジュアルな
ピッチのステッチが思い起こされます。
ミシンでは表現できない手縫い「らしさ」
を強調する意味で多い仕様です。
対してこのAxiomは、
堂々としながらも敢えて繊細さを
感じるピッチを目指しました。

ステッチ糸はボディと同系色とし、
カジュアル要素を極力抑えています。
ディティールにインパクトがあるため
バランスと汎用性を重視しました。
これは当時のOMEGAの時計が
スポーツ性とドレス要素を兼ね備えた
オールラウンダーであることと
関連付けています。

結果として1950年代のモデルのみならず、
幅広い世代の時計に違和感なく溶け込む
懐の深いキャラクターとなっています。

次に剣先。
U型、あるいはラウンド型と呼ばれる
緩やかにカーブした先端です。


『ボート型』と呼ばれる一般的な
先の尖った形状より柔らかな印象です。
大きく盛り上がるヘリ返しの影響で、
剣先のカーブしている部分は
手縫いでしか縫うことができません。
※当時OMEGAは特注の産業ミシンを
所有していたようです。
手縫いを採用したことで、
ミシンでは実現の難しい細部の
攻めた仕様が実現できました。

型紙はモデル名と同じ【Axiom】を使用。
このディティールがSeamasterや
Constellationにとっての出発点であり、
『このベルトを合わせる=格好良いのは明白』
と誰もから認められる存在になるように。
という意味を込めています。
と誰もから認められる存在になるように。
という意味を込めています。

その他、皮革と構造のバランスを見直し
各部材が耐久性向上に結び付くよう
細かい調整を入れています。
時計本体とストラップが一体となって
見えるようバネ棒側の奥行きは
敢えて本体まで届く厚みとしています。


開発にあたり最も意識した点は
『着用感』『手首との一体感』です。

【Axiom】はヘリ返しの造形を除き
『芯材』と呼べる部材が存在しません。
革の特性もあり非常に柔軟です。

多くのストラップは芯材と呼ばれる
詰め物を用いて全体の立体感や
耐久性を作り込んでいきます。
しかし芯材を多用すると
どうしても着け心地が悪くなります。
特に日本人は一般的に手首が
そこまで太くありません。
海外製の長めのストラップの場合、
設計の想定よりきつく締め込む
ことになります。
結果として手首のカーブと
ストラップのカーブがマッチせず、
腕時計を着用した際の痛みや
違和感に繋がることがあります。
【Axiom】の型紙では芯材を極力排し、
皮革そのものに耐久性を付与することで
ベルトが腕に馴染んでいない状態でも
心地良いフィット感を得られるようにしました。

着け始めがソフトなだけでなく、
新品のストラップ特有の、
時計が手首から浮き上がる
現象も緩和されます。
それもあって時計と腕元の
一体感を強く感じることができます。

スポーティーさと上品さ、
これらをミックスすることで
装いを邪魔することなく個性を
発揮する格好良さとなっています。
次に、レザーです。
皮革は浜松でジビエ・レザーの研究を
長年行うSpiralの『Spiral dance』を採用。
Spiral独自開発の鞣し製法と染色で、
10年以上の歳月をかけ完成したシリーズです。

鞣しの工程で生じた独特のシボが特徴で、
一見ワイルドでありながらどこか品のある
表情が魅力です。

またAxiomは革を非常に薄く漉くため、
製品化すると銀面の荒々しさは薄れ
落ち着きが増します。

軽く、しなやかで、柔軟性があり、高耐久。
限界まで薄く漉(す)くことを考慮し、
皮革に十分な耐久性を残すために
Spiral danceの特性が不可欠でした。
裏面は敢えて防水合皮ではなく、
表面と同じ革で仕上げています。

この皮革が持つ高い吸湿性と
速乾性を活かした仕様です。
水濡れによる乾燥にも比較的強い
傾向があります。
※長く愛用頂くには適宜ケアを行ってください。
Spiral danceの正式採用は
型紙を引く前から決まっていましたが、
結果としてサンプル開発段階での課題を
解決した救世主となりました。
ちなみに動物の捕獲から解体・鞣し・
製造に至るまでの製品化プロセスは、
全て国内で完結しています。

最後にカラー展開です。
初期ロットのカラーは
・カーボンブラック
・ウォルナットブラウン
・イエローオーカー
・ブリティッシュグリーン
の4色です。

時計との連続性を意識し、
穏やかな発色の色味を選択。
ナチュラルな印象としました。
どれも単純な色では表現し難い、
絶妙な色合いに仕上がっています。
ヴィンテージモデルとの高相性は保証されます。

使い込む中で鈍い輝きを放ち、
時計と共にエイジングするさまも
楽しんで頂ける仕様となっています。


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発売は8月8日(木)12:00からとなります。
初回ロットのみ、付属尾錠は
当店にて集めたヴィンテージ品となります。
※形状はランダムとなります。
※OMEGA純正は別売

プレローンチで大変好評であったため、
初回のご提供は数が限られます。
完売した場合は追って受注を
受け付けられる体制とする予定です。
お待ち頂けますと幸いです。
当店にしかできないこと、
当店だからできることを、
これからも目指してまいります。
皆様にお届けできるのを
楽しみにしております。
White Kings