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2020/12/22 01:40

こんばんは。

WhiteKings 店主です。

”装飾的”な意匠を備えたモノを
decorative-デコラティブ-と表現します。


当店が扱う時計には
『アールヌーヴォー』だとか
『アールデコ』だとか
美術に詳しくない人からすると
なんのこっちゃという表現が出てきます。


ざっくり要約すると装飾の様式です。

アールヌーヴォーとアールデコは
デザインを表現する”線”が違います。

アールヌーヴォーは
植物的で不規則な線を多用した
華やかで柔らかいデザイン。
19世紀末から20世紀初頭ごろ主流でした。




対してアールデコはアールヌーヴォーに比べ
端正で無駄のない線が特徴。



1910年代以降に
新たな装飾様式として誕生しました。
規則的で直線的、そしてときに幾何学的。



直線を軸に描かれる曲線は
まるで迷路のようにも見えます。


工業的・技術的な進歩を基に、
より手軽に味わうために見出された芸術が
アールデコの一面です。

そのライトなコンセプトゆえ流行が過ぎた後は
俗物的で悪趣味と切って捨てられた
アールデコデザインですが、
その多様性が再び評価され今日も生き続けています。


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当店が扱う1920~1950年代のアメリカンウォッチは
アールデコの流れを汲んでいます。

アメリカンヴィンテージウォッチを語る上で
アールデコの存在は欠かせません。

1920年代に建造された
ニューヨーク・マンハッタンの
高層ビル群=摩天楼を彷彿とさせる
デザインたちは最たる例です。



アールデコは
アメリカ・ニューヨークで花開き
時代と共に様相を変えていきました。

アメリカのデザインの歴史そのものです。


1950’s BULOVA Rectangular watch WARWICK &Excellency



時代が下るとアールヌーヴォーデザインを
アールデコ様式で再解釈したデザインも
見られるようになります。

一口にアールデコと言ってもかなり多様性があります。

1940’s LOAD ELGIN CURVEX


これらの複雑なデザインが大量生産や機能美、
そして手軽さを基に作られたとは、
現代に生きる我々にはにわかに信じがたいです。



店主はアメリカンウォッチの中でも
とりわけBULOVAが好きです。
『手に届く上質と、高品質』
を体現し続けたメーカーだからです。

早くからスイスに自社工場を置き、
アメリカンウォッチとスイスウォッチの
ハイブリッドともいえるスタイルを
確立していました。

自国生産に拘らずコストを抑え
高品質な時計を生み出す
合理的思考を持ち合わせていました。


BULOVAのドレスウォッチには
ペットネームがついています。

その名前はゴージャスで格式高く
高みを目指すことへの夢や成功への羨望が
込められたものが多い気がします。

デコラティブな外装も
そのネーミングに則したものなのでしょう。

例えば”エクセレンシ―”は
高地位の者(高官)への尊称です。
日本語だと閣下といったところでしょうか。



重厚さあふれるラグは
品格や威厳の象徴に見えます。

ガラスは段がついており
文字盤がカットに沿って多層的に映し出されます。



この美しい時計のターゲットは
超がつく富裕層ではありません。

金張りという仕様から読み取れるように
当時『高いが、頑張れば手に届く』
そんな時計でした。

見かけ倒しのハリボテではない
芯の通ったモノづくりで
”憧れの世界”が表現されています。



このディティールは
必ずしもドレッシーな装いに
合わせる必要はありません。

小ぶりで男女ともに違和感のないサイズで
コートの袖下にさらっと忍ばせる
粋な使い方もお勧めです。



『権威』や『成功』というワードは
ときに鼻につくような俗っぽさや
欲にまみれた印象も与えます。

しかし誰もが成功へと憧れ、
自ら素晴らしい未来を切り開こうとした時代の
純粋な気持ちをこれらの時計の中に見る気がします。

手に届く小さな成功。
アメリカンウォッチの魅力は
そんなところにもあるのではないかと思います。

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現在、当店のアメリカンウォッチの
在庫量も増えてきています。

比較的安心して使用できる年代や
メーカーに絞って取り扱っていますので
『マニアックすぎて使うだけでも気を遣う』
といった時計は殆ど御座いません。

操作方法や扱いで不安な点があれば
お気軽にご相談ください。

本日は当店がOMEGAの次に好きな
アメリカンウォッチについてでした。

WhiteKings