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2020/10/05 05:08

こんばんは。

WhiteKings 店主です。

当店にとって、
当店が取り扱う時計は”商品”以上の存在です。


当店は
”Vintage watch collection and repair”
を標榜するとおり、

私どもにとっての”コレクション”として、
入荷した時計を迎え入れています。

度々お話してきたように
『スタッフ/店主が欲しいと思えるか否か』
が、当店の大きな仕入れ基準です。


”売れそう” ”人気”
だけで時計を売って行けないのが
当店の甘い部分であり、
同時に守っていかねばならない
スタイルでもあります。




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何やら不穏なタイトルですが、
OEMEGA好きの方なら、
ピンとくるワードかもしれません。


OMEGAのシンボルマークである”Ω”は
ギリシャ文字の最後の文字であり、
”これ以上ない、完璧な時計”
という意味が込められています。




このシンボルマーク、
時代とともに多少姿を変えてきたものの
”Ω”という文字を1世紀以上採用し続けた
OEMGAは、稀有なブランドと言えます。


時計に刻まれるΩのシンボルと
OMEGAがオフィシャルな媒体で使用する
”Ω”の書体は必ずしも一致しません。

刻まれるΩシンボルには揺らぎがあり、
同年代で様々な形が混在するのも特徴です。
”この時期からこの時期までがこの書体”
と単純明快な線引きが出来ません。

非常にざっくりと答えるなら、
初期が縦長のΩシンボル
ある時期から現代のような丸いΩシンボルが
多くなった、くらいでしょうか。


そして
”縦長Ω”の時代を懐かしむ日本の愛好家からは、
タイトルの通り”ナメクジ”というワードが
よく飛び出します。

これは
OMEGAの純正尾錠の形状を表します。





ぬるりと角がなく、伸びやかな立体造形。
1960’sまで見られたタイプの尾錠です。

プレスで打ち抜いたそれとは違い、
どこか手作りのような雰囲気が漂います。

現存数の少なさもあって
愛好家の間では、尊い?仕様です。



後年はエッジの利いた造形に変わっていき、
最終的に立体造形も廃されます。

1970’sの尾錠



これをナメクジと呼称する日本人のセンスはさて置き
有機的で艶っぽい造形が、時計好きの心を捉えるのは
大いに頷けます。


※現在数千円で手に入るものはレプリカと称した
模造品が殆どですので本物をお探しの方は要注意です。




ここからが本題です。

この”ナメクジ”仕様、
尾錠だけではありません。

時計の顔である文字盤=ダイヤルにも、
ナメクジが這っていた時期がありました。


1950’s OMEGA Seamaseter Non name Original Black Dial


あのナメクジです。



60’sのΩシンボルとの比較です。


ヌルッと感が違いますね。


このナメクジタイプは40’s後半~50年代初頭、
他のΩシンボルと混在する形で採用されていました。



この時代ですので、植字は金無垢素材でしょうか。
金”細工”と呼ぶのがしっくりくる繊細さです。




50’sの質実剛健とした図太いボディとは正反対に、
文字盤に控えめに鎮座するΩシンボル。




丁寧に描かれた”OMEGA AUTOMATIC”の
金書体とともに、何ともいえない愛らしさを感じます。

私は、ナメクジというより
某NHKのシャクトリムシのキャラを思い起こします。


ちなみに、意図してそうしたのか
失敗して偶然ナメクジになったのかは不明ですが
出来の悪い偽物にもナメクジ風の書体が存在します。
当店コラムは真贋解説ではないため、
真贋根拠には適さないことを改めてお伝えします。



表面のグロスコーティングの面影はなく、
初めからそうであったかのような
朧げでマットな顔つきとなっています。



その朧げな顔に輝きを失うことなく浮かぶ装飾たちは
本物のモノづくりの ”結果”が遺した輝きです。



今回はΩシンボルについてフォーカスしました。


次回はこの個体に搭載される
機械=ムーブメントについて取り上げます。





WhiteKings 店主