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2020/06/08 04:49

おはようございます。

WhiteKings店主です。

当店の什器や小物、衣服は全てスタッフの私物です。

スタッフが撮影に使う小道具は、家族や親族・友人から受け継いだものが多く、撮影を機に昔の記憶やその人の面影を追想することが増えます。


時計と、スタッフ中村の私物



今回は時計の”面影”に重要な影響を与える、研磨、未研磨についてお話します。


ヴィンテージ時計を調べていると
『磨き』『外装仕上げ』『未研磨』といった単語を目にすることが多くなります。
当店も『商品に研磨作業は行っておりません』といった発言をします。

改めて、”研磨”とは何なのか?

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研磨とは、時計の外装(ケース)を専用工具で削り、磨きをかけることで、表面に付いた小傷や打痕を消して美観を向上させる作業を指します。
『外装仕上げ』『磨き』『新品仕上げ』『ポリッシュ』 これらはいずれも”研磨”のことです。



腕の良い研磨職人の手にかかると、一見新品か?と錯覚するほどの輝きを演出することができます。

研磨を行うことができる素材は、ステンレススチールや金無垢といった無垢素材=単一の素材で構成されたもの、”金張り”と呼ばれる製法で分厚い金を外装表面に張り付けたものに限られます。

薄い膜で覆われたメッキや、非常に硬いチタンは、基本的に研磨ができません。

美観が命の現行時計や、不意に傷つけて美観を損なってしまった時計に研磨は有効です。

昔所有していたハミルトン・ベンチュラを地面に落として傷だらけにしてしまったとき、研磨で美しく蘇ってきた姿を見てとても感動したものです。


ただ、研磨は外観を元に戻しているわけではありません。
あくまで表面を削り取っているので、繰り返すごとに時計の外装が痩せ、シルエットが変わっていきます。

研磨をやりすぎるとボディの耐久性や防水性も失われていくので、現行品であれば最終的にメーカーでの『外装交換』となります。
これには結構な費用がかかります。

ヴィンテージウォッチの場合は、新しい外装を用意することは困難です。

一度研磨すると表面はきれいになりますが、本来のシルエットにはもう戻りませんので、販売当時の面影は薄れていきます。
何度も繰り返すと、輝いてはいるけれど角がなくなり、不自然でぼんやりとした印象になります。
これを一般的に『外装(ケース)がダレる』と呼びます。


当店は、その時計が重ねてきた歴史や雰囲気、当時の面影を大切にしています。
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そのため、お客様からご要望があった場合のみ研磨を実施しています。

どれが正解というわけでなく、ご自身がどうされたいか次第となります。

店主も自身の時計を磨き込むこともありますし、絶対に磨かないモデルもあります。
傷だらけでギタギタの時計を少しでも綺麗にしたいという気持ちは当然わかりますし、傷も思い出と受け入れる気持ちもわかります。
ケースバイケースで研磨/未研磨をお選びいただければ幸いです。

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店主は元々デッドストック品を中心に時計を集めてきました(起業を機に殆ど手放してしまいました)。
長年潔癖症でしたので『時計は綺麗であればあるほど良い』という絶対的な価値観がありました。

今は当時ほど偏っていませんが、エイジングした個体と同じくらい『当時の状態に近い個体』にも、こだわりを持っています。
あのビシッと整ったボディラインを見ると、興奮せずにはいられないのです。


1960’s OMEGA Seamaster Automatic Cal.565


フルオリジナル。
ブレスレットを含め、当時のままの仕様です。
直線と曲線を多用した、特別感の漂う造形です。


このモデルは、ガラス風防周囲のベゼルに、放射状のヘアラインが入るのが特徴。



通常のシーマスターは、このベゼルが鏡面仕上げで、輝いています。


竜頭が半分引っ込み、少しだけ頭を出しています。
これもこのモデル独自の仕様です。



横から見た時の、ハンバーガーのようなシルエット。
ベゼル/ケース/裏蓋がそれぞれ独立した曲線を描きます。



贅沢な立体メダリオン仕様のシーホース=海馬。



この”シーホース”が立体で描かれたシーマスターが欲しい。という方も多いのではないでしょうか。

私も『初めて買うシーマスターはメダリオンが立体になっていないと嫌だ!』と強い拘りを持って探していました。


当時のシルエットをはっきりと感じられるのは、やはりフェイス周辺です。
ブレスレットを支える脚=『ラグ』は、多面的なカッティングが施されています。



文字盤含め、美しい。

機械も美しいまま。

傑作機のCal,565です。



※撮影はオーバーホール前のものです。


ブレスレットまで当時のままの個体は、かなり少ないのが現実です。
余計な手が加わっていない、ピュアな個体が欲しい方には大変お勧めできます。

当時のままという贅沢。

60年前のシルエットをじっくりご堪能下さい。

WhiteKings 店主