2020/04/27 23:10
こんばんは。
WhiteKings 店主です。
紳士時計は、長年着用者の動きを邪魔しない適度なサイズが意識されてきました。
カフ(袖元)に隠れ、必要な時だけちらりと顔を覗かせ時刻を確認する。これが本来の紳士時計の使い方でした。
当店はこの何気ない所作に、時計と着用者の一体感のようなものを感じています。

また、人間の手首は体を鍛えてもサイズが変化しづらい部位です。
例えば店主は体の成長に伴わず手首周りは中学生頃から殆ど変化していません。
デザインや機能に目が行くばかり自身の体格に合った時計を選ぶことを忘れがちです。
手首の許容範囲を無視したオーバーサイズは、見た目の違和感だけでなく肌を傷めたり健康面に影響を与えることもありますので要注意です(店主の経験談)。
着用して痛くなる腕時計はそもそもその人に合っていないと言えるでしょう。
なぜ半世紀近くもの間、腕時計のサイズは殆ど変化しなかったのか。
専ら技術的な制約や保守的な要素に結び付けられがちですが、当店は冒頭のように人間工学や使用方法やデザイン論に基づいた哲学が存在したと捉えています。

例えば美しいモノを推し量るとき、比率を意識することが推奨されます。
デザイン工学で用いられる『黄金比』は意外にも腕時計のサイズ感に活用できる当店は考えています。
予備知識として、黄金比とは 1:1618=約 5:8(整数比)の比率を示す名称です。

黄金比と密接な関係を持つフィボナッチ列数
一般的に”最も美しい比”と形容され、この比率に近い値(=近似値)の物体や構造に人は無意識の美を感じるとされます。
身近なものではapple社のロゴはあらゆる部分が黄金比で構成されています。
黄金比はデザイン構成の1手法ですので過度な多用や信奉は感心しませんが、比率や余白を意識する”物差し”として非常に優秀です。
ヴィンテージのドレスウォッチは腕に乗せると意外にもこの比率に近い値を示します。
1960’s OMEGA Seamaster Automatic Cal.565

この時計は極めてオーソドックスな35mmのケース径です。
ラグを含めた全長も、当時の紳士時計のセオリーに則ったサイズといえます。
現代日本人の手首幅の平均は60mmないといわれていますので、58mmで比率換算すると丁度5:8ほどになります。

他にも時計と肌露出の割合や、時計の縦幅と掌の幅など、細かくは省きますが様々な部位を対比すると5:8になるのはなかなか面白い事実です。
ちなみに店主の手首幅は52mmとかなり華奢ですので、32mm程度のサイズが似合う計算になります。

あながち机上の空論とも言い切れない比率と一体感の関係性。
ヴィンテージウォッチを通して”美しいとは何か”を考えてみるのも一興かもしれません。
WhiteKings 店主